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2009年6月16日

ツボカビとアフリカツメガエルの関連性に関するXCIJの見解

 アフリカツメガエルが、日本国内において、カエルツボカビ菌を拡散させ、多くの両生類を絶滅に導く可能性についてマスコミで報道されました。しかし昨今ではこれに対して否定的な見解が主流を占めるようになってきています。日本ツメガエル研究集会(XCIJ: Xenopus Community in Japan)におきましても独自に検討と実験を重ね、やはり否定的な結論が得られましたので、ここに見解を示します。

 この問題は、2006年、両生類特有の感染症「カエルツボカビ症」の原因となるカエルツボカビ菌(学名:Batrachochytrium dendrobatidis)が日本国内のアフリカツメガエルにおいて確認されたことが発端となりました。その後、日本の両生類を絶滅に導く可能性として、アフリカツメガエルに社会的注目が集まりました。我々、日本ツメガエル研究集会では、問題視され始めた直後より、 その真偽を調査し検討すること、およびもし事実であった場合の拡散防止のため、矢尾板芳郎(委員長・広島大)、高瀬稔(広島大)、浅島誠(東大)、上野直人(基生研)、有賀純(理研)、平良眞規(東大)を構成委員としたツボカビ対策委員会を設立し、本問題への対策にあたってきました。

 そして、調査の結果、以下の3点が明らかになりました。

1) 日本国内には古来より多様なツボカビが広範囲において生息している可能性が極めて高いこと
2)日本国内のほぼ全ての両生類が既に耐性を獲得している可能性が極めて高いこと
3) 過去にツメガエルが放流された自然池において、他の両生類の大量死の報告は存在しないこと

 独立行政法人・国立環境研究所の報告でも「日本及び韓国でも在来種個体から多数のカエルツボカビ系統が検出されている。しかし、両国では野生カエル個体の被害は殆ど報告されていない。(一部抜粋)」としています。これらの結果より、少なくとも日本国内において、アフリカツメガエルがカエルツボカビ菌の媒介者として、他の多くの両生類の絶滅を導く可能性は極めて低いという結論に至りました。 今後とも、時期尚早な結果発表や行き過ぎた報道などにより、研究や教育に大きな被害をもたらすことが無いよう十分に注意を払う必要があります。

日本ツメガエル研究集会 (XCIJ) ツボカビ対策委員長 矢尾板芳郎 (広島大学・教授)
日本ツメガエル研究集会 (XCIJ) 代表 浅島誠 (東京大学・名誉教授)




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