日本ツメガエル研究会
2018年4月13日

外来種アフリカツメガエルの
野外拡散防止について


 アフリカツメガエル(種名: Xenopus laevis)はアフリカ原産のカエルで、頭胴長は5 cm〜13 cmです。オタマジャクシからカエルに変態後も雨天時の夜間などにしか陸に上がらず、日常的にはほぼ水中で生活しています。そのため、水中生活に適した扁平な体や水かきのある後肢を持っています。餌は概ね動物質で、野外では昆虫をはじめとする小型の無脊椎動物、小型魚類、他のカエル類、及びそれらの死骸を食べていると考えられます。日本では、ペットあるいは肉食魚の生き餌として、観賞魚店で広く販売されています。また、生命科学研究の実験材料として、専門業者により大学等の研究機関に販売されており、さらに企業による試薬産生にも使われています。

 最近、このアフリカツメガエルが日本国内の野外で繁殖し、在来水生生物を捕食することにより、生態系に大きな影響を与える可能性がマスコミやインターネット等で指摘されています。当初、私たちもアフリカツメガエルが日本の冬を越して生存することは難しいと考えておりましたが、実際は、静岡、兵庫、和歌山、鹿児島県の、冬でも比較的温暖な地域では、すでに定着・繁殖していると考えられます。

 私たちは、大学等でアフリカツメガエルを用いた研究を行っている生命科学者です。アフリカツメガエルは実験動物として、基礎科学や医学の発展に必要不可欠な存在です。例えば英国のガードン博士はアフリカツメガエルの細胞を使った核移植研究により、iPS細胞を確立した山中博士と同時にノーベル賞を受賞しました。私たちは、この種が野外で定着・繁殖しつつあることを大変憂慮しており、環境保全、そして将来にわたっての実験動物としての有用性を担保する為にも、これ以上の定着拡大はあってはならないと考えています。そのため、研究室から屋外への逃亡については徹底して防止に努めると同時に、一般社会に対して、ペットや生き餌として購入したアフリカツメガエル個体やその幼生を不用意に野外に捨てないよう、あるいはこうした行為につながりかねない不特定多数への養殖アルバイトの勧誘を思いとどまるよう、啓蒙活動を続けていきたいと考えています。

 アフリカツメガエルのような繁殖力、環境順応力の強い外来種にかかる問題の常として、たとえこの動物を扱う100人のうち99人が上記のことに留意しても、一人が不注意、あるいは安易な気持ちで放逐してしまい、結果として地域の生物多様性を台無しにしてしまうことは、残念ながらあり得ないことではありません。この件にかかる関係各位のご理解、ご協力をよろしくお願い致します。

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2018年9月27日
外来種アフリカツメガエルの
逃亡防止を考慮した飼育方法


成体(変態後の小ガエルも含む)
カエルは建物内の実験室(あるいは飼育室)で飼育する。
カエルの飼育水槽にはフタを設置する。
フタを設置しない場合は、水槽の上部に「カエル返し」を付けるか、水面を水槽の上部から15cm以上取る。
実験室のドアは、必要時以外は閉める。また実験室の入り口に高さ15~20cm程度の「カエル返し」を設置する。
カエルは、麻酔薬(MS222)に浸す等、動物愛護上適切な方法を用いて安楽死させてから廃棄する。
飼育室内には、捕獲用の網を準備する。

胚・幼生
水槽の水換えを行うときは、流しの排水口に逃亡防止用の目の細かいトラップを設置する。
死亡した胚・幼生は流しに直接廃棄するのではなく、三角コーナーに目の細かい不織布を設置し、そこで回収してから廃棄する。またこのときも、流しの排水口に目の細かいトラップを設置しておく。
胚は、ハイター入りの廃棄タンク、あるいは冷凍庫に保存してから廃棄する。幼生は、麻酔薬(MS222)に浸す等、動物愛護上適切な方法を用いて安楽死させてから、上記に従い廃棄する。

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